みんな大好き森喜朗さん、予想通り「辞してなおも輝く」一部始終
【連載】山本一郎「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」
戦後のアカン感じの日本の見本市みたいになりました
三國志で洛陽を燃やした董卓さんが討たれて遺体を燃やしたら一週間ぐらい燃えていたという故事がありましたが、先週、東京オリンピックごと盛大に炎上していた森喜朗さんがいまなお煙を上げております。お元気で何よりだと思いますね。かれこれ燃え始めてから10日でしょうか、ほんと董卓か山火事かってぐらいの勢いで、文字通り歴史に名前を遺しそうです。燃えたのは洛陽ではなく東京オリンピックでしたが。
その後、スポーツ界の松本人志的なご意見番へと見事な昇格を果たした大坂なおみさんに森喜朗発言への見解を求めるマスコミが殺到。この「日本で社会的な何かあるたびに、とりあえず大坂なおみに話を聞きに行く」お作法がマスコミに定着したあたりが我が国のジャパンである所以(ゆえん)だと思うのですが、やはり日本には立場をわきまえながら自分の意見をしっかり言えるマイノリティの貴重さみたいなものを感じるんですよね。大坂なおみさん、コメントが安定していてブレないので、安心して話を聞きに行けるのは素晴らしいです。
そして、道中で経団連会長の中西宏明さん(日立製作所会長)が「SNSは怖ろしい、炎上する」というコメントを残し、さらには東京五輪のボランティア大量辞退を受けて自民党幹事長の二階俊博さんが「おやめになりたいというのだったら、新たなボランディアを募集する」と発言して次々と誘爆。もはや東京オリンピック界隈はボンバーマン状態となっております。言いたいことは分かるんですがねえ。
お偉いの皆さん、マスコミに聞かれたら何かを言わなければならない立場とはいえ、ただでさえ森喜朗さんの面白発言でみんな臨戦態勢なところで「どうとでも取れる発言」をしてしまうことで「お前も老害だったのか」と謂れもない批判を受けてしまうわけですよ。そこはうまい具合に「私は本件で申し上げられる立場ではない」とか「行方をきちんと見守りたい」などの無難な発言をしておけばいいのにと毎回思うんですけどね。
もちろん、一連の連鎖爆発の、その爆心地となった森喜朗さんが無事であるはずもなく、いったんは「森会長は謝罪した。この問題は終了と考える」と幕引きを図ったはずのIOC(国際オリンピック委員会)が日本のマスコミの盛大な盛り上げ報道に煽られて手のひらを返します。これはひどい。オリンピックのスポンサー筋も、逆ギレ謝罪会見とまで報じられた森喜朗さんが東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長であることについて容認できないコメントを出すに至ると、俺たちの森喜朗さんも万事休す、完投目前の8回途中10失点大炎上で落城することになってしまいました。
さらには、辞任するはずの森喜朗さんが、その会長後任として、元Jリーグ初代チェアマンである川淵三郎さんを指命してしまいます。もちろん、責任取って辞める人が後任を指名するってどういうことなのよ、という素朴な疑問を抱きはします。しかしそれ以上に、川淵三郎さんという人は森喜朗さん以上に高齢男性であり、そもそも百田尚樹作品を愛読し櫻井よしこさんを私淑する発言を繰り返しているがゆえに、おそらく後任人事で会長として川淵三郎さんが収まると森喜朗さん以上にアカン感じの過去発言を蒸し返されて、洛陽どころか長安も爆発しかねない状況になってしまいます。